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そこに道があるから
酔っ払いさん(2006.5.7投稿)

「←恵那  418×→」
赤いトラス橋を渡った先にある青い標識。向かう道が通行止めであることが判りやすくバッテンで示してある。国道が通行止めで県道に迂回しろだと?道路マップでは点線となっており、「側壁崩落により通年通行止め」と書いてある。しかし結構有名な廃道らしく、web上でも通過レポートがいくつか存在する。そのレポート内容をまとめると、

 ・四輪は無理だが、二輪なら通行可能。
 ・完全放置プレイ状態。
 ・夏場はジャングルと化す。

 季節はまだ5月初めである。ここを走らずして何のためのオフ車か、何のために岐阜まで来たか。かくして酷道マニアの聖地、R418「黒瀬街道」に、キャンプ道具満載のXT600Eでサンデーライダー酔っ払いが(HNです、酒気帯びで運転したわけではありません)果敢に挑む!(注意:本文はアマチュアライダーによるテスト走行を描写したものです。常識ある方は一般道を走りましょう。)

 時刻は17時少し前だが、まだ十分に明るく不安もない。木曽川沿いの半分剥がれた狭い舗装路を進むとトンネルが。照明無し、おまけに出口が見えないよ、「ぎゃー怖えー」誰もいないのをいいことに、思わず大声で叫ぶ。
何のことはない。途中でカーブしている為、出口が見えなかったのだ。いい歳こいて半泣きした事を恥じつつ先へ進む。

 道が途中で二股に分かれる。左がボロボロの舗装路で右がダート。「国道だもん、舗装路だろ。」迷わず左へ。ところがやばいくらいの九十九折れを繰り返しながらこの道、ぐんぐん標高を上げている!間違いに気づいてさっきの分岐に戻ると、ちゃんと大きく看板に書かれてるでないの。なになにこの先国道は通行止めにつき、迂回の町道を通れ、とな。町道で迂回しろというのもすごいけど、この町道もけっこうキテるのだ。
 紛らわしいなあ、もう、と誰のせいにするでもなく本道?を前進。右側に木曽川へ下りる登山道のようなものがあった。何でも橋を渡って向こう側に通じる道があるらしいが、これがそうなのか。どっちにせよ乾燥でも156kgのバイクで行く勇気はありません。

 そうこうしてるうちに、さすが国道らしい立派な赤い欄干の橋を渡ると、いよいよ「通行止め」のでかでかとした文字と、その下にいろいろ能書きが書いてある看板がお出ましになった。横に倒れて半分土に埋まったゲートらしきものもある。いっておくが私は基本的には法律を遵守する小市民である。幼少の頃は間違いなく「いーけないんだ、いけないんだ、せーんせに・・・以下略」と後ろ指指す立場の人間だった。いつの間に汚れきった大人になってしまったんだろう・・・なんて思うこともなく、完全ダートとなった道を突き進む。

 道は進むにつれどんどん狭くなり、特に山側は蔦やら枝やらにょきにょき飛び出していて、走りづらい事この上ない。かといって谷側は一歩間違えば木曽川へ真逆さまである。路肩も弱そうだし、ただでさえ今朝の大雨で路面はマディーなのだ。でっかい落石を避け、時に倒木をどかしながら、えっちらおっちら泥まみれになって進む。このままじゃあ家に上げてもらえないかも知れないなんて考えている余裕はない。

 やがて道は再び広くなり、もうすぐこの道も終わりかなと思ったその時。
土砂崩れにより、道が完全に塞がれている!「側壁崩落により通年通行止め」と地図に書き記してあった文字が頭の中をよぎる。しかし行くしかあるまい。失敗して落ちれば木曽川に転落である。一瞬妻の笑顔が瞼に浮かぶ。「新しいバイクが欲しい?冗談言ってんじゃないわよ」
 実はほとんど何も考えず突入し、何なくクリアできた。先人たちの轍によってしっかりとラインが作られており、これまでの私の経験とか勘とか薀蓄なんかが「いける」と叫んでいたからだ。
 ある意味最大の山場は越した。このルートはいずれダムの下に沈むとの情報もある。それゆえの完全放置プレイなのだろう。やがて脇の甘いゲートをすり抜け(入っちゃいけないところから出るんだ、文句あるまい)笠置ダムへと辿り着いた。

 ここまで誰ともすれ違っていない。人恋しくなって携帯電話を開くと着信アリ。仕事先の部下(一応いるんです、少ないけど)からだった。かけ直してやると仕事上の相談事であった。一気に現実世界に引きずり戻される感覚に抵抗を覚え思わず、「そんなことより(←ヒドイ)俺さ、今すごいところ走ってきちゃったんだよ、ね聞ーて、聞ーて」と遮ろうとして思いとどまった。

 語ったところで同じ趣味をもたない相手はどんな反応をする?廃道走ってきたぜなんて自慢しても、世間一般的には理解されない。「楽しいですか」と聞かれれば「楽しい」としか答えようがないし、「なんでそんなところに行くの」と聞かれれば「そこに道があるから」と答えるだろう。
 結局「こんどゆっくり飲みながら話そうや」と大人っぽく誤魔化して電話を切った。

 日が沈み、あたりも暗くなってきた。再びXTのエンジンに火を入れる。先ほどの電話で頭の中の半分は休み明けの仕事のことで一杯だ。(残り半分は今日の晩御飯)だがこれでいいのだ。ONがあるからOFFがある。次のOFFにはどこに行こうか。そんなことも少しは考えながら、急激に寒くなった中央道を鼻水垂らしながら家路へと急ぐのであった。

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